日本屈指の観光地として、多くの人を魅了し続ける街、函館。異国情緒あふれる街並み、世界三大夜景とも称される輝き、新鮮な海の幸。
その「観光地」としての圧倒的な魅力に惹かれ、「いつかこんな場所で暮らしてみたい」と考えるフリーランスや移住希望者は少なくありません。
ですが、僕(車掌ツヨシ)も取材で訪れるたびに感じていました。
「観光で“訪れる”函館」と、移住して“暮らす”函館」の間には、思った以上に大きなギャップがあるのではないか、と。
この記事は、「親記事」として函館移住の全体像を掴むためのガイドです。
家賃や仕事、気候といった個別の詳細は別の停車駅に譲り、ここでは「観光で見える函館」と「移住後に感じる函館」の違いを、最新のデータ、現地の声、そして移住者のリアルなストーリーを交えて立体的に描いていきます。
車掌ツヨシムムッ!今日は“観光の街の裏側”を覗く、ちょっとディープな旅ですな!



そだね〜、移住のリアルをぜんぶ繋げて見ていくっしょ〜。焦らなくていいからね。
観光都市・函館の“もう一つの顔”
函館の魅力は、その「華やかさ」にあります。しかし、その輝きのすぐ隣には、「暮らし」としての落ち着いた、時にはシビアな現実が横たわっています。
まずはデータから、函館の“もう一つの顔”を見ていきましょう。
観光客数の高水準と地元の温度差
函館市の発表によれば、2023年度の観光入り込み客数は約528万6000人に達しました。
函館電子新聞「函館の観光入り込み客数528万6000人 コロナ禍前と同水準に」
これは北海道新幹線が開業した2016年度(約560万人)に次ぐ、過去10年で3番目の高水準であり、街がインバウンド需要などで活気づいていることを示しています。
街には多くの観光客が訪れ、ホテルや飲食店は活気に満ちています。
しかし、その一方で。
地元に目を向けると、「人が多く訪れること」と「住む人が増えること」は、必ずしもイコールではない現実が見えてきます。
人口構造と暮らしの変化
函館市の統計情報を見ると、その実像が浮かび上がります。
市の人口は2005年(平成17年)の約30.5万人をピークに減少傾向が続いており、2025年9月末現在の住民基本台帳人口は約23.3万人です。
さらに深刻なのは高齢化率で、同時点の老年人口(65歳以上)比率は37.5%に達しています。
若年層、特に生産年齢人口の流出が続く一方で、50代以上のUターン・Iターン移住や、一部の外国人移住者が微増しているのが現状です。
函館は、かつての成長期を終え、「静かに成熟する街」としてのフェーズに入っているのです。
観光と定住をつなぐ新たな挑戦
もちろん、函館市も手をこまねいているわけではありません。
課題があるからこそ、新しい動きも生まれています。
特に西部地区(元町やベイエリア周辺)では、歴史的な建物を活用した空き物件再生プロジェクトや、NPOと連携したリノベーションまちづくりが活発化しています。
単なる「観光客を呼ぶ」施策から、「定住者・関係人口を増やす」施策へ。
函館は今、「観光から暮らしへ」と舵を切る、大切な転換期を迎えているのです。



フムフム、あの美しい夜景の裏側には、人口減少というリアルな課題があるんですな…。



そだね〜。でも、課題があるからこそ、地元の力で新しく変わり始めてるっしょ。
函館移住者の声に見る“ギャップ”の実像


データが示す「全体像」と、移住者が肌で感じる「リアル」は少し違います。
ここでは、実際に函館へ移住した人々の声から、ポジティブなギャップとネガティブなギャップを掘り下げます。
ポジティブなギャップ:「余白」と「人の温かさ」
多くの移住者が口を揃えるのが、「時間の流れが変わった」という感覚です。
「東京にいた頃は、常に何かに追われていた。函館に来て、朝市のおばちゃんとの会話や、ふと見上げる空の広さに“余白”を感じるようになった」
観光では味わえない、日常に溶け込む絶景。通勤ラッシュのない路面電車の音。近所の人との「おはようございます」の交換。
都会のスピード感とはまったく違う、「人としての温かさ」や「丁寧な暮らし」が、ここには確かに存在しています。
ネガティブなギャップ:「冬」「交通」「仕事」
一方で、都会の便利さを前提に移住すると、厳しい現実に直面します。
1. 冬の生活コストと厳しさ
雪は札幌ほど多くないと言われますが、坂道が多く凍結(ブラックアイスバーン)するため、車の運転や徒歩での移動は想像以上に神経を使います。また、古い木造家屋も多く、断熱が不十分だと冬の光熱費(特に灯油代や電気代)が跳ね上がります。
2. 公共交通の“間”
路面電車やバスは市民の足ですが、都市部のように「5分待てば次が来る」わけではありません。1時間に2〜3本という路線も多く、特に郊外へ行く場合は「車がないと不便」と感じるシーンが増えます。
3. 仕事の選択肢
フリーランスであっても、地域との繋がりやオフラインの仕事(例えばローカルな取材やデザイン案件)を増やしたい場合、求人の絶対数は札幌や東京に比べて圧倒的に少ないのが現実です。
移住ストーリーに見るリアル
「函館に移住して“成功”した」と語る人たちは、このギャップをどう乗り越えたのでしょうか。
Aさん(40代・東京から移住したWebデザイナー)
「時間の流れが変わりました。収入は東京時代の7割になったけど、支出は半分になった。何より“心の時給”が上がった感覚です。便利な暮らしより、心地よい暮らしを選びました」Bさん(30代・元公務員の女性)
「函館が好きすぎて移住しました。公務員を辞め、今はNPOの手伝いと、週末のカフェバイト、リモートのライター業という“3足のわらじ”です。収入は不安定だけど、好きな街で、好きな仕事だけをする生活は充実しています」
彼らが共通して語るのは、「便利さ」や「高い収入」よりも、「自分らしい心地よさ」という価値観でした。



ムムッ!観光では絶対に気づかない“生活リズム”そのものに、大きな違いがありますな!



そだね〜。都会の便利さを求める人には厳しいけど、この“余白”を楽しめる人には、最高の街なんだね〜。
データで見る函館移住の現在地
「心地よさ」は重要ですが、フリーランスとして生計を立てる以上、経済的な基盤は無視できません。
最後に、函館の「経済」「支援」「未来」をデータで確認し、この旅を総括します。
経済・雇用と生活コストのバランス
函館の経済状況について、シビアな側面も見ておく必要があります。
前述の通り、生産年齢人口の流出が続いており、地元での「稼ぎやすさ」や「求人の選択肢」という点では、札幌や東京に大きく劣るのが現実です。
しかし、その一方で「生活コストも比較的安い」という事実は、フリーランスにとって重要な視点です。
特に家賃相場や物価(食料品など)は、都市部と比べると格段に抑えられます。
「大きく稼ぐ」ことよりも、「支出を抑えて身の丈に合った暮らしをする」ことに価値を見出す人にとって、函館は合理的な選択肢となり得ます。
※函館の詳しい「仕事事情」や「求人」については、別の子記事で詳しく分析しています。
行政と市民の支援ネットワーク
人口減少に悩む函館市は、移住支援に非常に積極的です。
「函館市移住サポートセンター(函館しごと・くらし「ランタン」)」が中心となり、オンライン相談から現地アテンドまで、きめ細かなサポートを提供しています。
特に注目したいのが「お試し移住制度」です。
家具家電付きの住宅に短期滞在(5日〜1ヶ月程度)できるこの制度は、「観光」ではなく「暮らし」を体験する絶好の機会。冬の寒さや交通の便をリアルに体感してから決断できるのは、移住者にとって最大のメリットと言えるでしょう。
今後の展望
円安の影響もあり、観光需要は今後も堅調に推移すると予測されます。
また、全国的なリモートワークの普及により、函館の「心地よさ」に惹かれて移住するフリーランスやクリエイターも微増傾向にあります。
函館移住のリアルな課題は、突き詰めれば「仕事・住まい・冬対策」の3つに集約されます。
この3つの課題を、自分なりに「これなら解決できる」という道筋を見つけられた人だけが、函館で長く、豊かに暮らしていくことができるのです。



ズコー!観光客数のグラフ(高水準)と、人口のグラフ(減少)が、まったく逆を向いてるとは思いませんでしたな!



そだね〜。でも、課題がはっきりしてる分、移住前に準備しやすいし、挑戦しがいもあるっしょ!
今日の旅の記録:観光都市から“暮らす街”へ
「観光地・函館」は、誰でも受け入れてくれる華やかな街です。
しかし、「生活の場・函館」は、移住者に対して“覚悟”を問う、静かで奥深い顔を持っています。
函館移住で成功する鍵は、「観光の延長で住まないこと」。
夜景の美しさに憧れるフェーズから一歩進み、冬の厳しさ、経済の現実、交通の不便さといった「データ」を受け入れること。そして、行政の支援制度(お試し移住など)を活用し、現地の「リアルな声」に耳を傾けること。
それらを総合して、自分軸で「函館での暮らし」を再設計できたとき、この街はあなたにとって、ほかのどこにもない“最高の故郷”になってくれるはずです。



ムムッ!函館はデータでじっくり見ると、静かな可能性を秘めた都市ですな!



そだね〜。“住む函館”は、旅の続きじゃなくて、まったく新しい始まりっしょ。
編集後記
今回の取材を終えて僕が一番強く感じたのは、“観光の余韻”と“暮らしの温度”の違いでした。
観光で訪れる函館は、非日常の「高揚感」を与えてくれます。
一方で、移住者が語る函館は、日常の「安心感」に満ちていました。
どちらも函館の魅力だけれど、その根っこにあるのは、きっと「人と時間の距離感」なのだと思います。
函館は、都会のスピードに疲れたとき、人生の次を考えたときに出会う、「やさしい街」なのかもしれません。
フムフム。データを見つつ、今日も僕らは旅を続けるのですな。